汗を大量にかく厄介な症状、「多汗症」に悩まされて当院へお越しになる方は多くいらっしゃいます。そしてその中で、時折こういった質問を受けることがあります。
「多汗症は、遺伝によるものですか?」
結論から申し上げますと、多汗症と遺伝との関係は明確には明らかになってはいませんが、遺伝が原因となって多汗症を発症する可能性は低いと考えられています。
今回は、「そもそも多汗症とは一体何なのか」を辿りながら、多汗症と遺伝の関係についてご説明します。
多汗症とは、ただ汗を大量にかくというものではなく、何もしていない時に、生活に支障がでるほど汗が大量に分泌される症状のことを指します。
汗が大量に出ることが必ずしも多汗症だと安易に決めつけることは出来ないのですが、クリニックに行く必要を感じるほど大量の汗に悩まされるということを考えると、多汗症を疑うのも無理はないことだと思います。
しかし、ここで気になるのは、「どこから分泌される汗なのか」です。
多汗症を疑う方の中には、同じく汗に悩まされる症状「ワキガ」と混同されている方もいらっしゃいます。もちろん、多汗症とワキガはまったく違う症状なのですが、そもそもワキガと多汗症では、大元の原因となる汗の分泌される場所が異なるのです。
まずは、ワキガについて。
ワキガは、「アポクリン腺」という汗腺から分泌される汗が原因で、独特の強いにおいを発する症状です。アポクリン腺は脇の下を含む、体の特定の部位に存在し、誰にでもある汗腺です。
ではなぜ、誰にでもある汗腺にも関わらず、ワキガになってしまう方とそうでない方がいらっしゃるのか・・・それは、生まれつき持っているアポクリン腺が大きかったり、数が多かったりということが影響しています。
そして、アポクリン腺の大きさや数は、遺伝が大きく関係していると考えられています。つまり、両親のいずれかがワキガだった場合、その子供もワキガ症状がみられる可能性が高いのです。
一方で、多汗症の汗は、ワキガの汗とは異なり「エクリン腺」という汗腺から分泌されます。
ここから分泌される汗は、運動をした時や暑い時に排出される、いわゆる一般的な汗と言えます。そのため、運動したときに汗を多くかくという程度のものであれば、代謝が良く健康な証拠とも言えるでしょう。
何もしなくても汗を大量にかいてしまう多汗症の主な原因は、汗腺の大きさや数といった生まれつきの要素ではなく、「交感神経」の働きであるとされています。
交感神経とは、自律神経の一つで、体のあらゆる働きをコントロールしている神経です。
例えば、緊張や興奮をして心拍数をあげるというのも交感神経による働きですが、同じく緊張やストレスを感じる場面で汗腺から汗を分泌させる指令を出すのも、交感神経の役割です。
つまり、多汗症とは、交感神経が過剰に働き、汗のコントロールが乱れている状態と言えます。
多汗症と遺伝との関係ははっきりとは明らかにされていませんが、アポクリン腺の生まれつきの数や大きさが主な原因であるワキガに対して、交感神経の働きが主な原因である多汗症は遺伝との関係性は薄いと考えられています。
しかし、自律神経の乱れというのは、食生活をはじめとする生活習慣が大きく影響するものです。
したがって、同じような食生活・日常生活を過ごしている親子同士が、いずれも多汗症になるというのは珍しくはないのです。
「親が多汗症で悩んでいるけど、子供も多汗症になるのでは…?」とお悩みの方は、まずはクリニックに相談してみるという第一歩をおすすめいたします。
フェミークリニックでは、多汗症を悪化させてしまう生活習慣の改善についても、丁寧にご案内いたします。